余罪なし

特にないです

2021年振り返り 読書編

生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害

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関わりたくても関われないような傾向を見せる人の特徴として、幼少期に『愛着』が育まれなかったということが挙げられており、愛着は実は生物学的な機能であることも初めて知った。こういった機能の不全により社会での活動が難しくなるケースが多いらしい。また、こういう人たちでも『安全基地』となる人が得られれば社会復帰できるということ。逆に言えば、カウンセリングにも行けないような人までは拾えないということでもある。ここは別問題だけど。

愛着が育まれない要因として『善意の虐待』が挙げられていた。良かれと思っても当人にとっては苦しみでしかない場合もある。カウンセリングの際に、むしろ親とか周りの接し方から変えていく、ということも筆者は試みていて、実際それで効果が出ているのだから、やはり『安心』をいかに得られるかということなのか。

また、回避性の傾向を持つ人が『性的にも、いわゆる男性的、女性的な魅力がある人よりも、ボーイッシュな女性とか、中性的な男性とか、ホルモンが濃厚過ぎないタイプの方が好みであることが多い』と書いてあった。そのことは、『性的な要素が、喜びよりも負担になってしまうことと関係しているだろう』としているのは、少なからず自分に当てはまるので納得できた。恥の感情が性にも影響して、結果的に性を感じさせないタイプを指向するのは納得感がある。まあその考え方はそういうタイプの人たちから性を取り除いてしまっているので暴力的な考え方ではあるんですけど。

夢の国から目覚めても

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同性愛と百合同人にまつわる話だった。自分の中には結局のところ自分は当事者ではない(レズビアンではない)からなあという意識があり、けど"この社会"を生きている以上は当事者ではないわけがなくて、今もどこかで『普通』ではない自分を殺している子供がいるし、殺して無理矢理順応して摩耗しながら生きている人たちがいて、その環境が変化し続けないのは『当事者ではないから』という無関心にあるという点で省みるところがあった。自分は当事者ではないけどその周りの人である、という意識はあったほうが良い。

作中のヒロさんは十七年間百合創作をし続けてきた男性だけど、主人公は彼にレズビアンであることをカムアウトできなかった。そしてヒロさんはカムアウトしても大丈夫だと思わせられなかったことを謝罪していて、そういう向き合い方をしていきたいな。ヒロさんの優しさを受けた由香は「大好き!」と思っても彼に抱きつけなくて、『抱きつく』というただそれだけの行為にそれ以上の意味が付与されてしまうということが、なぁ~……。

あと、百合同人の話でもあったので、すごくコミケに行きたくなった。コミケって、全員が欲望ファーストで動いていて、その空気感が心地よかったんだろうな。何者かであることが求められない世界だからこそ自分自身でいられるというか。まあそれは幻想なのかもしれないですが……。

裏世界ピクニック 6巻

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題材が寺生まれのTさんなだけあって怖さよりもエンタメ性に特化して面白かった。後書きにもあったけど、一冊通して一つのテーマをやっていたのが『劇場版』って感じがあった。かつての敵だった潤巳るながTさんを撃退する流れも確かに劇場版だな……。大人らしく振る舞おうと意識している小桜がしかもそれを伝えるのも好き。 空魚が茜理に愛着を持つようになったのが凄く良いんだよな~Tさんに記憶を消された茜理を取り戻そうとするのもすごく良い。成り行きとはいえ裏世界のかなりの部分に脚を突っ込ませちゃって、それを受けた鳥子が嫉妬してんのも良いし後部座席でコソコソ喋ってお互いの存在確かめあってるのえっちすぎでしょ。バカタレがよ。

井手上漠フォトエッセイ normal?

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井手上漠さんのことを存じ上げなかったんですけど、こうして自分が表現したい形で自分を表現できているのはカッコいいし、それを発信することで、同じような悩みを持ってる人を勇気づけるだけではなく、(『夢の国から目覚めても』のところでも書いたけど)その周りの人たちの意識を変えられるはずなので、こういう話はどんどん発信していってほしいですね。

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会

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今更読んだ。読み物としては面白かったけど、実際に社会の中のオタクがどうなのかはよくわからなかった、というか自分はあまり興味がないんだと思う……。

三体Ⅲ 死神永生

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次々と展開する危機とそれに対する対応が面白さを天井知らずにしており、それと同時にスケールも大きくなって最後には宇宙の熱死にまで広がる。しかもそれを緻密なまでの描写をもってなされるので、深く理解できずとも納得感がある。前作の危機が霞むほど。これまで読んだ本の中で一番スケールが大きかった。序盤からトンデモ過ぎて笑いながら読んでたんだけどオーストラリアに四十一億人を移住させるところで爆笑しちゃった。 程心とAAの関係性がかなりよかっただけに、女女銀河の果てまでふたり旅パートがすぐ終わってしまったのだけが惜しい。

わたしたちが光の速さで進めないなら

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SF短編集はいろんなアイディアが読めて楽しいな~と思ってるんだけど、同時にもっと長編で読みてえ~と思うことも多くて、これに収録の『感情の物性』という話はまさにそれだった。手に取ると喜びだったり憎しみだったりを感じることができる物質が世の中に販売されるという導入で、最初はみんなそれを信じないんだけど次第に手に取る人が増えていき、その危険性が指摘されたりするけど流通が止められなくなり……という話なんだけど、結構いいところで終わっちゃったので、もっと長編で読みたくなった。

探偵AIのリアル・ディープラーニング

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ミステリというよりはSFのつもりで読んだけど面白かった。探偵AI「相以」とその対となる犯人AI「以相」というネーミングが良い。 中国語の部屋がそのまま舞台となった展開も、試されているのが〈僕〉ではなく相以で、〈僕〉は主人公の輔との記憶をコピーしたAIだったという展開も面白くて、というかそこが一番面白かった。母の死の真相に迫ったところも良かった。敵組織のオクタコアの人たちの魅力が薄いな〜と思ったらそれすらも織り込み済みで、さらに大きな悪の存在が示されるラストも良かった。あとシンプルに読みやすい。

犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー―探偵AI 2―

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トリックが壮大で面白かった。荒唐無稽、とまでは言わないけどちょっとついてけなかった部分あるが……。しっかり全部の要素回収してたのも良い。右龍家の三つ子要素も面白い。 以相の犯行に相以の推理自体を組み込むという点も面白かったし、それがふたりの初めての共同作業とされるのもエグくて良かった。

四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニング

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面白かった!推理の終着点がなかなか見えて来ず本当に大丈夫かな?と思ってから指名された犯人がかなり予想外、というか意表を突かれたけど、説明するための手がかりは提示されていたので納得できた、というか納得する云々以上の展開の気持ちよさがあった。

ミモザの告白

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ある日クラスの美少年の汐がセーラー服を着て登校してくる、という導入。連絡先交換するときに赤外線通信とかが出てきて懐かしいな~とは思ったけど、2021年にこの題材でその時代設定はズルくないか? とはいえ『自分の理解できないもの』に対する衝突は描いているので、読んだ人に目を向けさせるような効果はあるとは思う。まあ最後に主人公が汐の頭を撫でたところが受け入れられなさすぎてお話としては自分には合わねえ~と思った。

差別感情の哲学

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誠実である、ということがどれだけ難しいことかを突きつけられた。上で読んだ本を振り返ると、自分は性に関するトピックに興味があるのはわかるし、それらに対して誠実でありたいと思うんだけど、そう思うことすらも欺瞞ではないか?と言われているようで、読んでいて辛かった。そしてこんなお気持ちを書いていること自体が……というところも辛い。

この本の中では、「よいこと」を目指す中の差別的感情も自覚しなければならないとされていた。何かを誇るとき、実際は他者との比較によって、他者を見下して快を得ている。他者を差別しているという自覚はないままそれが行われる。自分だけで完結すると思っていた向上心すらも批判していて、努力によって向上したのであれば、そこには努力できない人との比較が発生する余地がある。努力できない人に対しても、「努力してもダメだ」と言わせない社会がある。そういう人たちに対する差別は障害者差別や人種差別などに比べて「些細な問題」に見え、しかも社会の基本枠に関わるため制度的な解決が難しい。

そういった全てに対して差別感情を認めた上で自己を批判し続けることでしか誠実であることはできない。大事なのは差別をなくすことではなくどう向き合っていくか。
めちゃめちゃしんどいけど、やっていきましょう……。

機龍警察 白骨街道

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流石におもしろさが常軌を逸しているだろ。ミャンマーサイドはどこまで姿俊之を追い詰めれば気が済むんだと思ったし日本サイドではどこまで城木を追い詰めれば気が済むんだと思った。(絶対これ關剣平出てくるだろ……)ってところでマジで出てきたし『鬼機夫十二神将』ってマジで何???????

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

ここに書いた。

zaki3mymy.hatenablog.com

スーパーカブ 1巻

ここに書いた。 zaki3mymy.hatenablog.com

クリムゾンの迷宮

ここに書いた。

zaki3mymy.hatenablog.com

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)

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10月末に出た4巻発売PVの大橋彩香×田所あずさとかいう狙いすましたかのようなキャスティングにまんまとやられて読みだしたけどめちゃめちゃハマっちゃった。最近の漫画とかで料理とかアウトドアとか、そういう趣味的な要素をベースに百合をやる作品が増えてきた印象があって、それらは自分も好きなんだけど、もっとシンプルにラブコメが好きかもしれんと思った。面白すぎる。一気に読んだ。2巻でkocsに感じるものがあったオタクが絶対に落ちてしまう関係性があるので、kocsのオタクは是非2巻まで読んでほしい。あとCV:茅野愛衣みたいな女が出てくるんだけど百合作品におけるCV:茅野愛衣の女が辿る運命を3巻で断ち切ってくれたのがマジでうれしかった。4巻はそれありなんですか!?みたいな締め方をしてくれたのがマジでうれしすぎてうれしすぎて本当に早く5巻が読みたい。まさかラノベに百合コンテンツとしてのハマり方をするとは思わなかった。百合が好き。

自閉症津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く

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なぜ津軽弁を話さないのかというローカルな疑問が、実は全国的な現象だったことを臨床という地道なデータ集めから明らかにして、それがなぜかという仮説も心理学だけじゃなくて言語学とか他の分野からも検討し、ASDの意図理解という側面からの説明で納得のいくところに至ったのが研究のエッセイとして面白かった。やっぱり臨床って地道だけど地に足ついて進むのが面白いな。

「意図とは、「何かをしようと考えていること」「こうしようと考えていること」「目指していること」であり、意図は単なる欲求ではなく「目標のために、未来を志向してプランを立て、調整するといった心の動き」といえると述べました。その意味では、ある行為をする人のなかに存在するもののようにみえます。」

—『自閉症津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く (角川ソフィア文庫)』松本 敏治著 https://a.co/7fG74RS

「コミュニケーションにおいては、他人を意図をもった存在としてみることがとても重要になっています。つまり、それが本当に存在するかどうかはわかりませんが、人には心というものが存在していてそれが行為の背景にあると考えます。」

—『自閉症津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く (角川ソフィア文庫)』松本 敏治著 https://a.co/i8wjWRT

コミュニケーションは究極的には意図理解であるということ、というのが示されたのがかなりよかった。例えば「ありがとう」には『今からあなたに感謝を伝えますよ』という意図がある。ASDの傾向を持つ人にはそれが難しく、だから突飛な行動をしてしまったり、理解を得られないような形でコミュニケーションしてしまったりということがある。言葉をその額面通りでしか使用できないとコミュニケーションがうまくいかない。その言葉が使われる背景を相手と共有していること、そして共有していることを理解していないと難しい。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

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めちゃくちゃ面白かった。『霊媒』によって犯人を知ることができるんだけど、当然それを示すためには証拠を集めて推理することになる。そして各章におけるその構造は、クライマックスでは、これまでの事件を再度推理し直していく中で、これまで描かれた城塚翡翠とは何者なのかということが明かされていくというこの本の構造自体に相似する。だからこそメタが効いてくる。すごい体験だな……。

読む前は(霊媒、ねぇ……)とTwitterで時事ネタに一家言があるアカウントみたいなことを思っていたし、読み始めもまあ~~~だいたい同じようなことを思っていたけど、すごく面白かった。全部ネタバレになるので何も言いませんが……。

読めなかった本

読み途中の本

積んでる本

まとめ

読書が下手すぎる。